東アジアにおける輸出主導による成長の衰え

日曜日 , 21, 1月 2018 Leave a comment

低コスト製造業のブームは終焉を迎えます。アジアの発展途上国の経済は対応できるのでしょうか?
輸出主導の開発戦略は、アジア太平洋地域全体で60年以上にわたり経済成長を促進する中心的な役割を果たしてきました。中国は間違いなく最大の成功例ですが、中国だけではなく日本、韓国、香港、台湾なども競争力のある輸出振興策を掲げて急速な経済発展を遂げました。この数十年は、貿易と投資の自由化により市場は開放される一方で、保護主義のイデオロギーも弱かったので、輸出主導型の戦略が成功する上で極めて好都合な環境でした。過去20年間は、外国直接投資が低コストで豊かな労働力を持つ途上国に注ぎこまれ、資本や技術、国際市場の知識をもたらしました。多くの発展途上国では、工場が建設され、輸出が急速に拡大することによって急激な成長軌道が描かれました。しかし、今日では、輸出主導型の開発戦略の優位性を低下させる変化が生じています。
私たちが「輸出主導」の開発戦略について話すとき、製造品の輸出がその対象になります。そして、今日の製造業の世界で進んでいる実質的な変化は、輸出主導の成長戦略に深刻な影響を与える可能性があります。世界銀行は最近、このトピックに関する優れた報告を行いました。
オートメーション、スマートファクトリー、ロボットの導入の加速は、低コスト労働に依存する開発途上国の競争力を低下させる要因となっています。昨年の産業用ロボットの売上高は前年から約30%成長しました。同時に、人工知能はこれまで人間にしか処理できなかった認知課題に対応できるようになってきています。こういった技術の進歩が、生産地域を決定する要因としてのワーカーの賃金の重要性を低下させています。
同時に、今日では製造過程における洗練されたサービスの重要性が増しています。今日のインターネット中心の経済では、消費者は特注品やジャスト・イン・タイム・デリバリーの要求が多く、低賃金のワーカーを活用した製造だけでは対応できません。そのためには、発展途上国では一般的ではない、世界レベルの物流や最先端の情報・コミュニケーション技術の導入が要求されます。
多くの開発途上国市場にとっての優位性である低賃金労働者の相対的重要性が低下することによって、製造業および輸出プラットフォームとしての発展途上国市場の魅力は必然的に低下するのです。実際に、製品に関わらず、雇用しなければならない労働者数も減っていきます。中国を例にすると、Foxconnは産業用ロボットの導入により、工員6万人分の雇用を削減しました。
自動化が進むことで、賃金コストは下がります。つまり、雇用人数を削減することにより、過去のように賃金を多く支払う必要がなくなるのです。この傾向は、「早期の産業の空洞化」という現象を引き起こしています。そのため、低・中所得国では、開発の初期段階で製造のピークに達し、1人当たり所得水準が年々低下する現象が起きているのです。例えば、西欧では製造業は1990年に所得水準が約14,000ドルとなった頃がピークでした。しかし、インドやサハラ以南のアフリカでは、約700ドルで製造のピークに近づいているようです。
これらの根本的な変化は、将来の輸出主導の開発戦略の動向が、東アジアで経験したものとは大きく異なることを意味します。しかし、上記の内容は、製造業における変化の一部にすぎません。貿易政策の環境の大きな変化が、それと同じくらい大きな影響を与える可能性があります。
過去60年間、世界は、GATTそして今日のWTOの下、貿易と投資の自由化を拡大し続け、二国間および地域間の自由貿易協定(FTA)の締結も進みました。米国は自由貿易の繁栄と、ルールに従った貿易体制構築の原動力となってきました。
しかし、今日、私たちは全く異なる世界に入ってしまったようです。米国は現在、貿易や自由貿易協定、そしてWTOに対して、公然と疑問を呈しています。貿易を制限する動きが世界的に増加しており(昨年は47%増)、WTOは包括的な多国間貿易自由化の実現が困難だと考えるようになりました。
もはや、世界が自由貿易に向けて進む時代ではなくなり、米国のような巨大な先進国がこれまでのように市場を開放することもなくなりました。輸出主導型の開発戦略が、製品を輸入する意欲と能力を持つ外国市場がなければ成立しないのは明白です。
まとめますと、これらの新たに直面する現実はいくつかの重要な意味をもたらします。:
日本、韓国、台湾、中国が発展したような成長の道を、次に続くベトナムやバングラデシュ、ミャンマー、カンボジアなどの発展途上国が同じようにスムーズに歩める状況ではなくなりました。発展途上国は、比較優位点である低賃金だけを頼りにはできなくなりました。技術への適応性とサービス部門の能力が今後はますます重要になります。製造業における輸出の見込みに期待できないため、政府は輸出可能なサービス分野における比較優位性を高める必要があります。
低賃金労働者がこれまで同様の比較優位とならないため、途上国は、これまで後回しにしてきた法の秩序、汚職、技術基盤などの弱点への対処を至急加速させる必要があります。現地の労働力の競争力を高めるためには、必要な技能を獲得するための質の高い教育システムへのアクセスを可能にする必要があります。また、製造業の仕事が減少する一方で、移民労働者が増える懸念もあります。
発展途上国が新たな課題に対処するには、外国直接投資が重要な役割を果たします。政府は、外国企業にとって魅力的なFDI制度の構築に真剣に取り組むだけでなく、FDIが経済開発の目的とニーズに沿った内容で実施されるように管理する必要があります。
オープンマーケットはこれまで以上に重要ですが、当たり前に存在するものではなくなりました。
もちろん、貿易は引き続き成長の重要な原動力であり、発展途上国にとっても経済開発戦略の重要な要素であることに変わりはありません。しかし、東アジアで1〜2世代に渡って黄金時代をもたらした輸出主導の成長は過去のものかもしれません。政策立案者は、新たに直面するであろう現実に備える必要があります。Stephen Olson氏は、ハインリッヒ基金の研究員であり、現在、香港科学技術大学の客員研究員も務めています。

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